ロンドン留学日記→帰国後はイギリスかぶれ英語教師の日記


by londondays
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アウシュビッツ強制収容所

ついに元アウシュビッツ強制収容所(国立オヒシフィエンチム博物館)へ。

入ってすぐ左側に、元死体安置所兼焼却炉で、後々ガス室としても使われた建物が。
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しっかりとしたレンガの建物で、中の2つの小さな焼却炉からは目が離せず、しばし放心。
アウシュビッツでは基本的に「放心」していた気がします。

いきなり見学をスタートしてしまった私たちでしたが、ガイド付の団体がわんさか建物に入ってきたので、とりあえずはパンフレット等々を探しに入り口正面の建物へ。日本語のパンフレットもありました。この建物の中にはカフェがあったりもしました。

私は日本語のパンフレットを買い、本格的に見学開始。
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「働けば自由になる」と書かれた収容所の入り口。
そして、この門の脇から、有刺鉄線の囲いがぐるりと周りを囲んでいます。
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ここの収容所の建物は全てレンガ造りでしっかりとしていました。いくつかの建物の内部に当時の様子や、収容された人の写真などが展示されていました。写真には収容された日にちと亡くなった日にちが記されていました。どんなに若くて健康そうな人でも、よく日にちを比べてみると、1ヶ月や2ヶ月だったりして。この収容所の目的が収容ではなく、殺害だったことが良くわかります。
寝る場所は、腐った藁の上や、レンガの区切りがされた場所。まるで家畜同然の扱いです。
ショックだったのは、人間の髪の毛の山。ナチスが人毛を「再利用」していたのは知っていたけど、さすがに実際大量の人毛と人の髪の毛で織られた織物を見たときはショックでした。三つ編みしたままの髪の毛も結構あって・・・。
そして、毎日多くの人が処刑された「死の壁」。
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あまり人がいなかったのもあって、一人で壁に向かって歩くとき、なんだか緊張しました。
静寂の中に、砂砂利を踏みしめる音。
この壁は建物と建物の間にあって、周りから見えなくなっています。
この右側の建物には地下牢があって、収容された人が壁に書いた聖マリアの絵があったりしました。地下牢は、暗くてすごく怖かったです。足がすくんで、一人で見るのは無理だと思いました。

上の階ではレジスタンスの活動が展示されていて、収容された人たちが収容所内で組織を作って活動していたのを初めて知りました。密かに情報誌も発行していたそうです。脱走も何度か成功したようですが、脱走を助けたとして収容者が殺害されていたそうです。
ドイツ兵の拷問の仕方も、爪の間を針で突き刺すとか、鼻から水を注ぐとか、かなり手の込んだ拷問が数多くあり、本当に狂気の沙汰だと思いました。

予想していたよりも時間がかかり、ビルケナウ(第2収容所)に向かうべく急いでバス停に行ってみるも、最終バスはとっくに行った後でした。ビルケナウはアウシュビッツ第一収容所より大規模で、より劣悪な木造バラックが立ち並ぶ収容所です。多くの人が想像する「アウシュビッツ」はこちらの方で、私もこの収容所は絶対行きたいと思っていたのですが、残念ながら行くことができませんでした。ビルケナウは解放前にドイツ軍がほとんど破壊したので、あまり建物も残っていないそうですが。列車で門をくぐるのは、ビルケナウの方です。

帰りもバスに乗って、駅へ。クラコフに列車で戻りました。
博物館ではほとんど話さなかった私たち。列車の中で、お互いの感想を話したりしました。
そこで、マカオ人の友達が日本への感情についても話してくれました。
基本的に、アジアの友達達は私たち日本人の前で戦争や、教科書問題・靖国問題等々についての話は避けています。ちょっと話が出そうになっても、「その話はやめよう」と話を中断する場合が多くあります。
彼女は、幼いころは日本が嫌いだったけど、だんだん日本がそれだけの国じゃないってわかってきたそうです。しかし、教科書で戦時中日本がしたことを教えないのはおかしいし、首相が毎年靖国神社に参拝しなくてはならない理由がわからない、と言っていました。ひとつ気がついたのは、彼女は靖国神社について宗教的な背景は知らず、戦犯を祭った場所とだけ認識していたことです。宗教的な背景を理解したところで、やはり参拝の理由はわかりかねると思いますが・・・。彼女は、「戦争で、日本が、日本兵が、どうしてそこまで残虐になれたのかわからなかったけど、アウシュビッツを見たら、これは戦争の『狂気』なんだって気がした」と言っていました。私も、日本が戦時中に行ったことは「狂気」で片付けられる問題ではないけれど、戦争は人を狂気に陥れることができるんだと思いました。アウシュビッツで囚人を虐待したり、処刑したドイツ兵だって、元は普通の人だったんだろうと思う。でも戦争中の「狂気」の中で、何も感じなくなってしまったんじゃないでしょうか。当時のドイツ兵や日本兵が異常だったんじゃない。誰でも、いつの時代でもこうなってしまう危険性はあるんだと思う。最近でもイラクでアメリカ兵・イギリス兵が囚人を虐待していたように。マイケル・ムーアの『華氏911』で、アフガニスタンに派遣されたアメリカ兵のインタヴューを思いだしました。
「まず自分を、自分の一部を殺さない限り、他人を殺すことなんてできません。」

私達は途中で電車を乗り換え、たまにウトウトしながら、クラコフに戻ったのでした。

続く。
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by londondays | 2005-04-30 07:36 | 博物館